「格安SIMの通信速度は遅い」って本当?

格安SIMは通信速度が遅い

格安SIMについて調べてみると「格安SIMは、大手キャリアより通信速度が遅い」という話をよく目にします。これは本当のことなのでしょうか。

格安SIMを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスでは、NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクのような自社で回線を持つMNO(移動体通信事業者)から回線の一部をレンタルし、利用者全体で回線をシェアする仕組みを使っています。そのため、通常の利用では問題がなくとも、利用者が多くなる時間帯になると通信速度が安定せず、通信に時間がかかるケースが出てきます。

画像:総務省携帯電話ポータルサイトより

MVNOが一般的に混雑しやすい時間帯とされるのは、朝の通勤時間、お昼休み、夕方から夜にかけての退勤時といわれます。イメージとしては、朝晩の通勤ラッシュ時に道路が混んで渋滞が起きている状況が近いでしょう。実際に、スマートフォンの利用状況を改めて考えると、これらの時間帯によくインターネットに接続するという人も多いはずです。

利用する地域や場所によって違いはありますが、MVNOが限られたデータ通信量を利用者同士で分け合って使う仕組みを利用しているために、自前の回線を潤沢に使えるMNOと比べて通信速度が遅くなるケースが出やすいのは「本当」だといえます。

その一方で、保全や管理のために大きなコストが必要な回線や基地局を持っていないために、MVNOはMNOよりも安価にサービスを提供できるのです。

 

使うサービスによっても混雑時の通信速度に違いが

では、MVNO業者同士で混雑時の通信速度を比べた場合はどうなのでしょうか。MMD研究所が、2020年3月に東京、名古屋、大阪の主要駅で2020年2月4日~2月6日の平日3日間にわたって「格安SIM・格安スマホ通信速度調査」を実施しています。

こちらの調査では、端末として「Huawei P20 lite」を使用。Y!mobile、楽天モバイル、mineo、UQ mobile、OCN モバイル ONE、IIJmio、BIGLOBEモバイル、イオンモバイル、LINEモバイルの9社を対象に混雑時の通信速度が調査されました。

調査方法は3都市の主要駅で、各駅1箇所ずつ「9時~10時」「12時~13時」「17時~18時」の3つの時間帯の通信速度を計測。計測には「Ookla Speedtest.net」と、WebとYouTubeのLoading Timeが計測できる「5Gmark」の2つアプリが使用され、各サービス5回の計測が行われました。その結果が以下の箱ひげ図です。

■箱ひげ図:主要3都市格安SIMサービスのダウンロード速度

※箱ひげ図のひげ(縦の線)は最大値、最小値を表します。箱の長さは第一四分位数と第三四分位数を表し、箱の中の横線は中央値を表します。箱の位置は通信速度を、箱の長さは通信の安定度を表します。

 

■時間帯ごとのダウンロード/アップロード速度調査の結果

箱ひげ図でそれぞれのサービスのダウンロード速度の中央値を比べると、その上位3社はUQ mobile(39.2Mbps)、Y!mobile(35.0Mbps)、イオンモバイル(docomo回線・27.3Mbps)でした。

また、混雑時のひとつである昼12時~13時の時間帯のダウンロード速度の中央値を比較すると、UQ mobile(37.9Mbps)、イオンモバイル(docomo回線・28.1Mbps)、OCNモバイルONE(20.6Mbps)の順番でした。

従来から行われている全日・全時間帯のダウンロード速度の平均値比較では、UQ mobile(46.2Mbps)、Y!mobile(41.8Mbps) 、イオンモバイル(docomo回線)が33.1Mbpsという結果が出ています。

 

リストを見ると、MVNOでもサービス事業者によって通信速度にもそれぞれ差があることがわかります。MVNOへの乗り換えを検討する場合は、こうした接続状況のデータに加えて、無料通話プランなど各事業者が提供するサービス内容も考慮し、自分の使うシチュエーションに合うものを探すのが重要です。