拡大する中古スマートフォン市場

新型コロナウイルスもひとつの要因

 

iPhoneをはじめスマートフォンは定期的に新機種が発売されています。しかし、10万円超えの商品も多く、新機種が発売される度に買い替えていくユーザーは減少しました。

 

一方、中古スマートフォンの市場は拡大を続けています。

その要因のひとつとして、新型コロナウイルスの世界的大流行によるパンデミックが国際的な経済悪化を招いていることがあげられます。世界規模で失業者や収入が減少した人が増えたことで人々は想定外の出費などに備え、必要以上の機能を持つようになったスマートフォンへの出費を抑えるようになったと指摘する専門家もいます。

 

三菱総合研究所の調査においても、新型コロナウイルスによる影響が今後どうなっていくのか、ワクチンや特効薬の開発の成功で経済活動への制約が大幅に緩和するといった予測とロックダウンがこのまま続く最悪のシナリオも考えています。

●経済見通しにかかる経済活動抑制の前提

全世界で中古スマートフォン市場は成長

 

世界規模で中古スマートフォンの市場が拡大しているのは、新型コロナウイルスの影響による節約意識だけではありません。中古スマートフォンは最新モデルに比べて安価であり、数年前の機種であっても機能や容量が十分なものが多くあります。加えて、iOSもandroidも一定期間はOSをバージョンアップすることができ、バージョンアップ可能期間は使い続けるといったユーザーも増えています。

また、環境保護に対する意識の高まりにより、中古を推奨する声も多くなっているのです。

 

IDCによる調査によると、メーカーにより公式に再生されたスマートフォンと中古の両方を含む中古スマートフォンの世界的な出荷台数が2020年に合計2億2,540万台に達すると予測されています。これは2億650万台の出荷だった対前年の9.2%の増加に相当します。さらに2024年には3億5,160万台に達し、2019年から2024年にかけての出荷台数年平均成長率(CAGR)は11.2%のペースで増加すると予測しています。

 

●IDCによる中古スマートフォン市場の成長予測

 

5Gが中古市場を拡大する要因に!?

中古スマートフォンが人気を集めることになったことで、GoogleのPixelシリーズの廉価版やAppleのiPhone SEなど、ミドルレンジやローエンドのスマートフォンの人気も高まっています。

 

一般消費者の消費動向等の市場調査を手掛けるConsumer Reportsのテクノロジーライター、ブリー・ファウラー氏は、「スマートフォンの価格が1,000ドルを超えてきたことで、消費者の意識が変わり、自分に本当に必要な機能は何かを考えるようになったのではないか」と語ります。

加えてファウラー氏は、「音声通話の発信とその受信、ある程度の画質で写真が撮影できる機能、メールやSNSなどコミュニケーションツールが使えればいいとしている消費者がほとんどです。それだけであれば、1,000ドルも出す必要はない」と。

 

一方、5Gに対応した新機種に買い換えるユーザーも増えてくると予測されます。しかし、これにより下取りに出される4Gスマートフォンが増えることになり、中古市場の拡大をさらに後押しする可能性もあります。今後、5Gの一般消費者が利用するスマートフォンの展開が中古市場に大きな影響を与えると、IDCは予想しているのです。